iSBスタート!
和田 浩二(千葉工業大学 惑星探査研究センター)
って言われてもなんのことだかさっぱりわかりませんね.まず,SBとはなにか?から始めましょう.SBとは,ソフ〇バン〇のことではもちろんなくて,サイエンスボード(Science Board)の略称であり,ここでの「ボード」は役員会などを意味するボードと同じ使い方です.すなわち,我々,火星衛星探査計画(MMX)のSBとは,MMXにおけるサイエンスに関する最高意思決定機関と位置付けられています(一般的にプロジェクトとしての最終判断はプロジェクトマネージャが下します).MMXの立ち上げ初期から,Phobosからサンプルを取る意義はなんだ,とか,MMXのミッション要求を定義する,だとか,MMXのサイエンスに関するあらゆることが検討・決定されてきた場です.首尾よくデータが取得された暁には,SBにそれらが集約され,統合サイエンスとして最大限の成果を引き出す責務を担っています.なんだか厳つい印象ですが,軽いフットワーク(迅速な検討・決定)も信条でして,週1回の定例会をはじめ,日々議論を交わしております.このような役割のチームは,これまでの日本の探査ミッションには前例がなく,今後の探査ミッションの在り方の良い範例となるよう試行錯誤しながら進めつつあります.
さて,MMXのSBは,これまで初期のサイエンス検討チームを引き継ぎつつ機器チームからも責任者が参加して,日本国内の大学・JAXAメンバで構成されてきました.しかしながら,MMXはもはや国際ミッションです.近赤外スペクトル撮像装置(MacrOmega)はフランス・CNESが製作しますし,中性子ガンマ線分光計(MEGANE)はアメリカ・APLが製作することになりました.そのほかにも協力関係にある国外機関がいくつもあり,SBも日本国内に閉じていてはよりよいミッションにならない,と考えられてきました.そこで,国際SB,すなわちinternational SB,略してiSBを立ち上げようとしています(iを小文字にするのは…まあ流行りだから!?).その立ち上げ(キックオフ)会合を去る2018年3月8日と9日の二日間にわたって,東京は池袋の立教大学にて開催しました.MacrOmegaのPIであるJean-Pierre Bibring博士,MEGANEのPIであるDavid. J. Lawrence博士,ら数名の国外iSBメンバを交えて,MMXの在り方・ミッション要求など概念的なことからサンプリング手法など具体的な方法論まで,立教大学キャンパスの良い雰囲気も相まって,さまざまな事柄が活発に議論されました.当初はSBにデータを集約する,SBがあらゆるサイエンス活動をマネジメントする,という案について紛糾するかな,と危惧していたのですが,その点についてはあっさりと「良いサイエンスをすることが最優先だ!」と理解が共有され,幸先の良い,iSBの船出となりました.今後はオンラインでの会合を1,2カ月に一度,直接顔を合わせる(Face-to-Face) 会合を年に1,2度程度の頻度で開催していく予定です(次回のFace-to-Face 会合はフランスでどう?なんて話が出ています).
MMXの成果を左右する今後のiSBの活動にもご注目ください!