MMX搭載ミッション機器「MSA」フライトモデルの開発完了

「MSA」は、火星衛星探査計画(MMX)の探査機に搭載される13の機器のうち、火星圏でイオン質量分析と磁場計測を行うための機器です。火星圏は、太陽風の影響で火星衛星表面や火星大気を起源とするイオンが飛び交う状況です。MSAは太陽風をモニタしながら火星衛星表面物質の遠隔計測や、火星大気散逸の直接観測を行い、火星衛星の起源や火星大気の進化モデルに対して制約を与えることを目指します。

左:MSA FM(フライトモデル)。イオン質量分析器(MSA-S)(奥)、磁力計x2(MG-S1, S2) (前)、エレキボックス(右)MSA-E。右:MSA引渡時の集合写真。左から、澤田弘崇、永峰健太(JAXA)、田中勲、今泉雄策、片岡和彦(明星電気)、荒井美幸、佐藤悠平(MELCO)

「MSA」は、2019年12月から明星電気株式会社で基本設計を開始しました。設計審査やエンジニアリングモデル(EM)製造など各種開発試験を経て、2024年8月までに、フライトモデル(FM)の開発完了を確認する認定試験後審査(PQR)及び出荷前審査(PSR)を通過しました。その後、2024年8月に探査機システムメーカ(三菱電機株式会社)鎌倉製作所に輸送され、輸送後機能確認の後に、正式に引渡されました。

今後は、探査機探査モジュールに組付けられて、探査機システム総合試験に供されることになります。

図 :MMX搭載機器コンフィギューレーション図
MSAの取り付け部は、From-Z の画像上を参照。

MSAの開発責任者(PI)横田勝一郎先生
大阪大学大学院理学研究科

MSAは月探査機Kaguyaや水星探査機BepiColomboに搭載されたイオン質量分析器と磁力計を進化させたものです。イオン質量分析器では非常に高い分解能を実現しており、フォボス表面や火星大気起源の多岐にわたるイオン種を分別することが期待されます。磁力計は小型軽量性に優れた基本波型直交フラックスゲート方式を採用し、イオン観測の精度向上に貢献します。開発企業のご担当の方々を始めとする多くの方のご尽力により、MSAの開発を進めることができました。心より御礼申し上げます。

MSAの開発企業担当者 田中勲様
明星電気株式会社 宇宙防衛事業部

MSAは、イオン質量分析器については大阪大学の横田先生、磁力計については京都大学の松岡先生、JAXAの村田様の多大なご協力により、EM/FM開発を通しての評価、試験を行い、FM開発完了に漕ぎつけることが出来ました。今後の総合試験や軌道上において問題なく動作し、目的のデータが取得されることを期待しております。
JAXAの関係者の方々、大学関係者の方々、関わっていただいた皆様にたくさんのご支援、ご協力をいただき、本当にありがとうございました。