MMX搭載ミッション機器「サンプルリターンカプセル」フライトモデルの開発完了

「サンプルリターンカプセル(SRC)」は、火星衛星探査計画(MMX)の探査機に搭載される13の機器のうち、火星衛星で取得したサンプルを地球に持ち帰るためのカプセルです。取得したサンプルとそれを収納するコンテナをペイロードとして格納し,地球近傍で探査機から分離。単独で地球大気圏に突入、パラシュートで緩やかに降下,地表に軟着陸することで、安全に地球に持ち帰ります。

左:SRC FM(フライトモデル) 引渡の前に、ケースから取り出す前のSRC。SRCの中には、火星衛星で取得したサンプルとそれを収納するコンテナや,地球着陸時に展開されるパラシュートが内蔵されている。右:SRC 引渡時の関係者の集合写真。MELCO鎌倉クリーンルーム内にて撮影。SRC FMを前にして。左から、矢ヶ崎啓(JAXA) 、小澤宇志(JAXA)、太田崚雅、藤井駿、大矢洋明、吹井柊太(以上、川崎重工)、鈴木俊之(JAXA)、永峰健太(JAXA)

SRCは、2020年1月から開発メーカで基本設計を開始しました。設計審査やエンジニアリングモデル(EM)製造や各種開発試験を経て、2024年6月までに、フライトモデル(FM)の開発完了を確認する認定試験後審査(PQR)及び出荷前審査(PSR)を通過しました。その後、探査機システムメーカ(三菱電機株式会社)鎌倉製作所に輸送され、輸送後機能確認の後に、正式に引渡されました。今後は、探査機復路モジュールに組付けられて、探査機システム総合試験に供されることになります。

MMX搭載機器コンフィギューレーション図
SRCの取り付け部は、From-Z の画像上を参照。

SRCの開発責任者(PI)鈴木俊之
宇宙科学研究所 研究領域主幹  

SRCは火星衛星で取得したサンプルを地球に持ち帰るためのカプセルです。はやぶさの SRCをベースにした概念検討の結果,MMXでは約1.5倍の直径60 cmにサイズアップしたカプセルの開発を進めてきました。大樹町におけるヘリコプターからのSRC投下試験(2022年7月)やNASA Ames Research Centerにおける前面ヒートシールドアブレータ加熱試験*(2022年2月)など多くの開発課題がありましたが、川崎重工業株式会社、株式会社IHIエアロスペース、日本飛行機株式会社、日本通信機株式会社、株式会社エイ・イー・エス、藤倉航装株式会社、アンテックの皆様のご努力により開発完了までこぎつけました。2031年には皆様のご期待に沿い無事にサンプルを地球に送り届けられるように、今後も引き続きシステム総合試験や射場作業を進めていきたいと思います。

SRCの開発企業担当者 大矢洋明様
川崎重工業株式会社 航空宇宙システムカンパニー 防衛宇宙ディビジョン 防衛宇宙システム総括部 宇宙システム設計部 宇宙システム設計課

川崎重工は、SRC全体の組立・試験を主に担当しました。IHIエアロスペース様、日本飛行機様、AES様、日本通信機様、藤倉航装様、アンテック様などサブコンポーネントメーカの皆様にもご支援・ご協力を頂き、無事にフライト品を完成させることができました。引き続き貴重なサンプルを無事に地球に送り届けられると信じ、カプセルの回収まで関係の皆様と協力しながら、ご支援したいと思います。

注釈:
・EM:エンジニアリングモデル
・FM:フライトモデル
・PQR:認定試験後審査(Post Qualification Test Review)
・PSR:出荷前審査(Pre-Shipment Review)