MMX搭載ミッション機器「CMDM」フライトモデルの開発完了
「CMDM(火星周回ダストモニタ)」は、火星衛星探査計画(MMX)の探査機に搭載される13の搭載機器のうち、火星周辺のダスト環境を調べる観測機器です。火星の周囲にはフォボスあるいはデイモスを起源とするダスト粒子がリング状またはトーラス状に分布していると理論的に予想されています。CMDMは、火星のダストリングを構成するダスト粒子を直接検出、あるいはダスト存在量の上限値を決定し、火星衛星軌道上でのダスト再集積現象のモデルを制約する観測データを得るための機器です。
CMDM-S FM(CMDMのセンサーユニット)。CMDM-Sはポリイミドフィルムに圧電素子を貼り付けただけのシンプルな構成のセンサです。縦が約1.4m、横が約0.9m、面積は1m2ありますが、重量は約270gしかありません。MMX探査機上のほかの機器を避けるために変わった形状をしていますが、どの位置にダスト粒子が衝突してきても検出することができます。
CMDMは、2019年3月から開発メーカ(明星電気株式会社)で基本設計を開始しました。設計審査やエンジニアリングモデル(EM)製造や各種開発試験を経て、2024年2月までに、フライトモデル(FM)の開発完了を確認する認定試験後審査(PQR)及び出荷前審査(PSR)を通過しました。その後、2024年3月に、探査機システムメーカ(三菱電機株式会社)鎌倉製作所に輸送され、輸送後機能確認の後に、正式に引渡されました。
CMDM-E FM(CMDMのエレクトロニクスユニット)。CMDM-EはCMDM-Sから出力されたダスト粒子の衝突に起因する信号の波形をサンプリング計測する装置です。ダスト粒子の信号は非常に微弱で、かつ頻度も小さいため、他の何らかによる信号(ノイズ)との区別をするためのイベント識別をするための機能を備えています。
今後は、探査機復路モジュールに組付けられて、探査機システム総合試験に供されることになります。
CMDMの開発責任者(PI)
千葉工業大学惑星探査研究センター 小林正規先生のコメント
CMDMは火星ダストリングの存在を確認するための観測装置です。これは新しいタイプのダスト観測装置で、季節ごとの火星ダスト粒子の存在量変化も調べることが可能な大きな有感面積を備えています。多くの開発課題がありましたが、明星電気の技術者の方々の努力によりスムーズに開発が進みました。MMXが火星まで行った際には、CMDMが世界初の火星ダストリングを発見することを期待しています。
CMDMの開発企業担当者
明星電気株式会社宇宙防衛事業部技術部システム開発グループ 佃麻里子様のコメント(所属は当時)
CMDMはセンサ部に新規要素が多く、製造工程の確立や試験条件の検討などに時間をかけて取り組みました。また、検出したイベントの識別のために、ランク付けの機能を設けるなどの工夫も行いました。小林先生やJAXAのご担当者の方を始め、関わっていただいたみなさまにたくさんのご支援、ご協力をいただき、無事にFMの引渡しが完了できたと思います。本当にありがとうございました。
注釈:
・EM:エンジニアリングモデル
・FM:フライトモデル
・PQR:認定試験後審査(Post Qualification Test Review)
・PSR:出荷前審査(Pre-Shipment Review)