MMX 搭載ミッション機器「MEGANE」の引渡完了について

2024 年 3 月 14 日、火星衛星探査機 MMX に搭載する「MEGANE」のフライトモデルは、開発を担当した NASA・APL から JAXA へと引き渡しが執り行われました。

MEGANE (めがね) は、MMXに搭載する13のミッション機器のうちの一つです。Mars-moon Exploration with GAmma-rays and NEutrons の頭文字をとった名称で、日本語では「ガンマ線・中性子線分光計」です。

MEGANE ガンマ線センサ (GRS) を前に。左から Leonard Andrew Dudzinski 氏 (NASA)、川勝 康弘 (JAXA)、上原 晃斉 氏 (MELCO)

火星衛星フォボスを始めとして、大気の無い天体の表面からはガンマ線や中性子といった放射線が放出されています。これらの放射線は、宇宙空間を飛び交う銀河宇宙線が天体表面にあるケイ素や鉄などといった原子に当たって反応した時に放出されるもので、このような放射線は出どころである原子の種類ごとに決まったエネルギーを持つことが分かっています。MEGANE は、このようなガンマ線や中性子線を計測して、それらがどの種類の原子 (元素) から出てきたものか調べることで、フォボスの表面がどの元素でできているか、またその分布を決定します。

JAXA と NASA は 2017 年に、MMX プロジェクトに関する様々な協力の取決めを締結しました。この取決めには、NASA が MMX にガンマ線・中性子線分光計を提供することが含まれます。米国内では機器提案の募集を開始し、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所 (JHU/APL) が開発を担当する MEGANE が選定され、開発がスタートしました。米国内にて設計、エンジニアリングモデル (EM) の開発を経て、2023 年 8 月にフライトモデル (FM) が完成し、最後の審査である出荷前審査 (PSR) を通過しました。その後 MEGANE FM は米国から日本に輸送され、日本国内での最終的な機能性能確認を実施した後、このたび正式に NASA・APL より JAXA および探査機システムメーカ (三菱電機株式会社; MELCO) に引き渡されました。

MEGANE は今後、MMX の探査モジュール部に組み付けられ、探査機全体の一部としてシステム総合試験に供されることになります。

JAXAは、NASA, APLから託されたMEGANEとともに着実に火星衛星へと到着できるよう、これからも最善を尽くして、準備を進めます。

引渡書類署名時の MEGANE 関係者の集合写真 前列: 左から Leonard Andrew Dudzinski、川勝 康弘、後列: 左から Erin Hoffer (APL)、John Stinchcomb (APL)、Dennis Harris (NASA)、小川 和律 (JAXA)、草野 広樹 (量子科学技術研究開発機構)、柳澤 拓也 (JAXA)、佐藤 悠平 (MELCO)、町元 恵瑠 (JAXA)

NASA, レオナルド・ダジンスキー
JAXA MMX MEGANEプログラム・エグゼクティブ

わたしたちは、MEGANE を JAXA と MELCO チームに引き渡すために参りました。 NASAは今日のこの日を迎えて、とてもうれしく思います。MEGANEは、これまで宇宙空間に飛び立ったガンマ線・中性子線分光計で最高の性能を持つものになるでしょう。この機器を開発したAPL チームをとても誇らしく思います。JAXAのMMX ミッションが、火星の衛星の起源を解き明かすことに我々もわくわくしています。MEGANE がその発見のその一部を担えることを非常にうれしく思います。ありがとうございました。

MEGANE 主任研究者(PI) デビッド・ローレンス
ジョン・ホプキンス大学(JHU) 応用物理研究所(APL)

全MEGANEチームは、MEGANEのFM(フライトモデル)の正式な引渡を完了する、というマイルストーンを達成できたことを大変うれしく思っています。さらに重要なこととして、ガンマ線・中性子線分光計(GRS, NS)及びデータ・プロセッシングユニット(DPU)を、無事に探査機本体に組み付けることができたことをうれしく思うとともに、この組付けを円滑に行ったJAXAとMELCOの皆さんの努力と献身に感謝します。最後になりますが、MMXの打上準備の次の段階を楽しみにしています。

JAXA 川勝康弘
MMXプロジェクトマネージャ

MMXの計画を開始するにあたり、太陽系で最重要な未踏峰とも呼ばれる火星衛星を探査するのだから、世界最高の観測機器を集めるべきだ、ということで米国のガンマ線・中性子線分光計技術に白羽の矢を立て、計画参加を求めました。本日、その協力が大きな節目を迎え、MEGANEを無事、受け取りました。MEGANEの開発にあたったNASA、JHU/APL、およびインタフェース調整にあたったJAXA、MELCOの関係者のこれまでの努力に感謝します。機器の引き渡しは、責任の引き渡しでもあります。MEGANEを探査機に取り付け、試験し、打ち上げ、火星衛星まで送り届け、MEGANEが素晴らしい観測成果を出せるよう、しっかりと責任を果たしていきたいと思います。

JAXA 小川 和律
MMX プロジェクト MEGANE 担当

米国の MEGANE 開発チームと日本側のプロジェクトの間に立って、MEGANE と探査機との間の技術的なインタフェース調整を担当してきました。日米の開発文化の違いなどもあって、これまで様々な課題や困難もありましたが、MEGANE 開発チームは大変優れたチームであり、それら全てを一緒に乗り越えることができました。無事に今回の引き渡しを迎えることができたことを嬉しく思います。


関連リンク:

MMX ニュース: MEGANE の PSR (出荷前審査) が完了しました