国際宇宙会議 IAC2023 参加レポート

記事執筆:火星衛星探査機プロジェクトチーム 探査機システム・リードエンジニア 今田 高峰


10月2日から6日までアゼルバイジャンの首都バクーで、国際宇宙会議 IAC(International Astronautical Congress)が実施されました。バクーはカスピ海に面した古くはシルクロードの要衝として、今は石油・天然ガス資源で栄えている町で、城壁に囲まれた旧市街地区は世界遺産にも登録されています。街中は至る所にIACの旗が建てられており、タクシーの側面にもIACのシールが貼られているなど、街として歓迎していることが実感できます。また、IACが開催されたバクーコンベンションセンターはコーカサス地方最大規模の会議場です。その会議場を最大限に使用して5日間に渡る各国の宇宙機関の代表の討議や講演、多くの技術セッションによる宇宙技術の国際交流が行われました。132カ国から約5400人が参加しました。特に、地元アゼルバイジャンや隣国のトルコの方が多く見受けられました。

JAXAの展示ブースとMMX探査機の模型。模型も長旅お疲れさまです。

JAXAは各種講演などに参加すると共に、開催期間中、広報ブースを設置しました。MMXプロジェクトもその一角に探査機の模型を展示しました。広報スタッフからは、参加者に、ミッションの内容やサンプル採取の方法、ミッション機器について説明しました。特に地元の学生は熱心で、ミッションや機器について興味深く聞いていました。探査ミッションは人気ですね。

中日の10月4日には短時間の講演も実施しました。講演内容としては搭載する観測機器、特にヨーロッパから提供されているRover(ローバ)やMIRS(近赤外分光装置)など、国際協力によって成立しているMMXミッションの特徴について紹介しました。加えて、MMX探査機の小規模天体への着陸という設計上で工夫したポイントも説明しています。

MMXプロジェクトについて講演する筆者(今田)

会場から出た質問としては、「フォボスの表面では局所的に重力方向が偏っている場所があると思うが、どう対処するつもりなのか?」というものでした。フォボスのような小さな重力を持った天体では、場所によって局所的な重力方向が天体中心方向から大きくずれている場所があります。不注意にもそのような場所を着陸場所に選んでしまうと地表面と重力方向が想定外に傾いてしまい、着陸時にひっくり返ってしまう危険が生じます。そこで、MMXでは事前にフォボスの周回飛行をしながら軌道の変化を観測することにより、それらの局所重力方向の変位について観測します。このような回答をしました。

今回の展示や講演を通して、海外でも多くの人がMMXプロジェクトのことを知って、応援するきっかけになればありがたいです。