太陽電池パネル(SAP)の初期機能確認試験を行いました
記事執筆:火星衛星探査機プロジェクトチーム 探査機システム・リードエンジニア 今田 高峰
2023年7~9月に、三菱電機鎌倉製作所で、火星衛星探査機に搭載する太陽電池パネル(SAP)の初期機能確認試験を行いました。これは作製した太陽電池パネルの健全性を確認する目的の他、今後実施される各種環境試験後の機能と比較するための試験です。

画像でご紹介しているのは、初期機能確認試験の一つである展開試験になります。最初折りたたまれた太陽電池パネルが、一枚一枚展開します。展開後の様子が図2になります。表面(図2)には黒い太陽電池が貼られており、こちらで太陽光を受け発電します。裏側は温度を制御するための銀色のシートに覆われています (図1)。
太陽電池パネルといえば、地上では太陽光発電などでおなじみですね。太陽電池パネルは人工衛星や探査機が宇宙空間で活動するためにもかかせないパーツです。そんな太陽電池パネルですが、宇宙空間でその役割を果たせるように、さまざまな工夫がなされています。
その一つが「重量」です。火星は地球よりも1.5倍以上太陽から遠いため、地球や月の周りを回っている衛星と比べて40%程度の太陽光しか受けられません。
その分、大きな太陽電池パネルを必要とします。一方で限られた打上げ質量で火星圏へ行って帰ってくるためには、探査機自体の質量を極限まで軽量化しなければなりません。そのためMMXでは、最新の高効率な薄膜軽量太陽電池セルを使用し、更にパネル自体も特別な軽量構造としています。図2のパネルの表側に、その高効率な薄膜軽量太陽電池セルが並んでいます。
もう一つは「剛性」です。MMXの探査機は火星の衛星フォボスの地表約10mの地点から自由落下で着陸します。着地の衝撃は地球の重力の0.3〜0.4倍程度ですが、それでも、通常の宇宙空間を飛んでいる宇宙機と違って、太陽電池パネル自体が着陸の衝撃に耐えなければなりません。また、着陸時の衝撃でたわんでしまうと太陽電池の端がフォボスにぶつかってしまうことになります。従って、高い剛性(変形しづらい性質)と、太陽電池の横幅を小さくする設計が必要になります。MMXの太陽電池パネルで特徴的な、縦と横の2段階に展開する機構は、着陸に伴うMMX特有の要求から来ています。
長い年月を要して、火星圏を往還し、フォボス着陸及びサンプルリターンを実現するためにも、太陽電池パネルの存在は欠かせません。打上げ後もその活躍に注目していきたいと思います。

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