火星衛星探査計画(MMX)詳細設計フェーズに移行!

記事執筆:火星衛星探査機プロジェクトマネージャー 川勝 康弘。(「ISAS ニュース 2021年3月号(No.480)」掲載記事より転載。)

フォボス着陸時の火星衛星探査機(MMX)の想像図

火星衛星探査計画(Martian Moons eXploration: MMX)は、世 界初の火星衛星フォボスからのサンプルリターン計画です。火 星衛星の起源の解明、惑星形成過程と物質輸送への制約、火星 圏進化史への新たな知見の獲得とともに、宇宙探査を先導する 技術の獲得をミッション目的として 2024 年度の打上げを計画し ています。

2020 年 2 月の文部科学省宇宙開発利用部会でMMXの開発が決定したことを受けて、2020 年度は基本設計を進めました。基本設計は、MMXを構成するシステムやサブシステム・機器について各種整合を図りつつ、設計仕様を固めていく重要な活動です。基本設計においてはコロナ禍による影響は大きく、2020 年春の緊急事態宣言発出直後からテレワークへ切り替え、各種会議や審査会は全てオンラインで開催するとともに、特に各国宇宙機 関とのやりとりは完全にリモートへ移行しました。しかし、対面 で議論ができないのは厳しいとの声もあがり、これまで対面で の非言語コミュニケーションを組み合わせて難しい国際調整を 乗り越えてきたことを実感させられました。そのような状況でも 関係各所の不断の努力により、コロナ禍の影響を最小限に抑え てほぼ計画通りに基本設計作業が進められたことに感謝しています。

その基本設計結果を確認するため、各レベルの基本設計審査 会(PDR: Preliminary Design Review)が行われました。まずミッ ション機器、続いて探査機バスのサブシステム、地上システム、その後探査機システム全体のPDRが順番に行われ、最後に全ての要素を含んだ総括PDRが 2021 年 2 月に開催されました。JAXA内外から参加した多数の方々に審査いただき、次フェーズ(詳細設計フェーズ)への移行が認められました。

今後試験用モデルなどのモノづくりが始まり、海外からも含 めモノのやり取りが本格化します。それに伴い各国宇宙機関と の協定もそれらの活動をカバーするために改訂が予定されてい ます。やることは山積みですが、チーム一丸となって 2024 年度 の打上げを目指して開発に邁進してまいります。