MMXローバ着陸テスト実施中!
火星衛星探査機MMXは2024年度に地球を旅立つ予定になっていますが、その旅路は孤独なものではありません。MMX探査機に先立ってフォボスに降り立頼つ、頼もしい相棒MMXローバとともに、火星圏に向けて出発します。
電子レンジサイズのMMXローバはドイツの宇宙機関DLRとフランスの宇宙機関CNESが協力して開発を進めています。現時点の重量は約25㎏、頑丈かつ軽量なローバ実現を目指しています。今回行われた試験はフォボス表面から40~100メートル上空でMMX探査機から分離した後、自由落下してフォボス表面に着地するときにローバがその衝撃を絶えることできるかを確かめるものです。
ローバがフォボス表面に接地したときに、ローバが横向きになっていたり、岩にぶつかったりする危険性があります。正確な接地条件(姿勢など)が不明なため、ローバの設計は幅広いシナリオに対応できるように準備しなければなりません。
そのため、現在、ドイツのブレーメン市にあるドイツ航空宇宙センター(Deutsches Zentrum für Luft- und Raumfahrt; DLR)の着陸・移動試験施設(Landing and Mobility Test Facility)で最初のローバ着陸試験が行われています。フォボスの重力は地球よりもはるかに弱いため(地球の2000分の1)、地球上では5cmの高さからローバのプロトタイプを落下させることで、フォボスへの降下の条件に合わせることができます。
DLRが公開した記事の中で、テストマネージャーのMichael Lange氏によると、フォボス表面への着陸の際の危険な状態を模擬するために砂に埋め込まれた2つの半球を使用し、それらの突起の上にいろいろな角度でローバを衝突させるという試験を行います。
このラフな試験は、MMX探査機の打ち上げに向けて探査機に合流するための準備を整えるためにローバに必要な作業のほんの一部に過ぎません。
一連の試験には、コンピュータによるシミュレーションが含まれており、あらゆるローバの着地の条件の可能性を考慮したものになっています。その後、2021年には、ローバの新しいモデルが開発・作製され、ローバが横向きに着地した場合に正しい姿勢に修正するように設計された機構など、より完全な機能を備えたものになる予定です。
また、ローバはフォボス表面でさらされる過酷な温度環境に耐えることができることを証明する必要があります。フォボスの1日はわずか約7時間で、昼と夜の気温は-150度から50度まで変化し、極端な温度差があります。ローバは搭載されている科学機器を保護しその観測に影響を与えないようにするために内部温度をほぼ一定に保つ必要があります。
なお、ローバにはカメラ、分光計、放射計が搭載されており、フォボス表面のの組成や表面の特性を調査します。また、ローバは太陽電池パネルを搭載していて約100日間フォボスの探査を行う予定です。
MMXローバは、JAXA、DLR、CNESの初の国際共同プロジェクトではありません。はやぶさ2に搭載されたMASCOTランダーは同じ国際協力チームによって設計・製造され、2018年10月に小惑星リュウグウへの着陸に成功し、小惑星の表面を間近で観測ことに成功しました。この小さな実験室は、17時間以上にわたってリュウグウの環境を分析し、予想されていたリチウム電池の性能を超えて活躍しました。はやぶさ2は今年12月6日に小惑星「リュウグウ」のサンプルを持って地球に帰還する予定です。
この記事は、DLRが公開した下記URLのプレスリリースに基づいています:「こちら」