サンプルリターンカプセルの検討状況

宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 山田和彦

最後の最後まで出番のないはずの、サンプルリターンカプセル(SRC)が、光栄にも火星衛星探査計画MMX-NEWSの工学分野の最初の記事投稿という大役を仰せつかりました。

SRCは、目標天体で取得した貴重なサンプルを格納し、地球近傍の宇宙空間で母船から分離され、そのまま単独で大気圏に突入して、地上まで安全に運ぶ役割を担っており、サンプルリターンミッションには欠かせない重要な技術です。火星衛星探査計画MMXも火星の衛星からのサンプルリターン計画ですので、当然、SRCが必要になります。

図1: MMX-SRCの概念検討図

MMXのSRCは、感動的な地球帰還のシーンを演出し、世界で初めて、月より遠い天体からのサンプルを地球に持ち帰った、「はやぶさ」の SRCをベースに開発を進めていく計画となっています。といっても、MMXは「はやぶさ」「はやぶさ2」より多くのサンプルを持って帰ってくる計画ですので、SRCも、「はやぶさ」のものより一回り大きくなります。

たかが一回りといえど、大きさが変わるとなると、いろいろ考え直さなければならないことが出てきます。まずは、そもそも、必要なものがちゃんとSRCの中に納まるのかという根本的なことから検討が始まります。SRCは、図1の概念図にあるように、1)サンプルを収納するコンテナ、2)大気圏突入時に空力加熱からサンプルを守るヒートシールド、3)降下シークエンスを制御する電子回路、4)回収班にSRCの位置を知らせるビーコン送信機、5)電子機器を駆動するための電源、6)ゆっくりと地上に着陸するためのパラシュート、など多く機器で構成されており、それらを小さなSRCの中に適切な配置していかなければなりません。特に、その中でも、柔らかい布で作られているパラシュートは、最後の最後に人の手によって畳んでSRCの中に収納されるので、それがちゃんと納まるのかは、実際に収納してみるまでは、安心できないのです。

図2: MMX-SRCのモックアップ模型

そこで、早速作ってみたのは、図2のような透明なSRCの模型です。これであれば、中に搭載する機器の配置もよくわかるし、折りたたまれたパラシュートの収納状態も確認できます。現在は、3D-CADのような技術を使えばコンピュータ上で、このような機器配置の設計・検討などは、リアルにできるようになっていますが、柔らかいパラシュートのようなものは、実際に畳んで収納してみて、その設計や収納方法が正しかったのかを確認するしかありません。このように、コンピュータ等を使った最新技術での解析・設計と実際に作って確かめることを繰り返しながら、SRCの開発が進んでいきます。

MMXが火星の衛星への長旅を終え、地球に帰ってきた、その日が、「はやぶさ」SRCより進化したMMX-SRCの初仕事になります。その役目を果たし、ミッションの最後をしっかり飾れるよう、これからどんどん開発研究が加速していきます。